歯周病
歯の病気の代表的なものに、むし歯(う蝕)と歯周病があります。むし歯は‘歯そのもの’が破壊される病気ですが、歯周病は‘歯を支えるまわりの組織(歯周組織)’に起こる病気です。
自分で気がつかない軽い歯周病を含めると、40歳以上の成人のうち、5人に4人が歯周病にかかっているといわれ、歯周病は歯を失う最も大きな原因となっています。
歯周病はどうして起こるの?
歯周組織は歯肉(歯ぐき)と歯槽骨(歯を支える組織)、歯根(歯の根元)をおおうセメント質、歯根と歯槽骨をつなぐ歯根膜からなり、歯を正しい位置にしっかり付着・固定するための強固な構造を備えています。しかし、歯磨きが不十分で、歯と歯肉の間に細菌が住み着いて歯垢(プラーク)がたまると、そこに炎症が引き起こされます。これが歯周病の始まりです。
歯周病が進行すると?
初めは自覚症状がなく、鏡で見ても気がつきませんが、そのうちに歯肉が赤くなったり腫れたりします。プラークが石灰化し歯石になると、自分では取り除きにくくなって歯周病が悪化し、歯と歯肉が付着している部分にすき間が(歯周ポケット)ができます。さらに炎症が歯肉の内部に進行すると、歯根膜や歯槽骨が破壊されて、歯を固定する力がだんだん弱くなります。この状態のまま放っておくと、ついには歯を失うことになります。
歯周病の治療法は?
歯周病は、歯を支えている骨が溶ける非常に恐ろしい病気です。成人の8割が歯周病にかかっているといわれ、歯を失う最も大きな原因となっています。
歯周病は「沈黙の病気」とも言われ、重症になるまで、自覚症状はほとんどありません。理解して頂きたいのは、歯周病は歯ぐきの病気ではなく、骨の病気であるという事です。歯ぐきは見せかけの鎧です。歯ぐきはそう簡単には溶けません。知らず知らずのうちに、骨が無くなっているのです。
歯ぐきから膿が出る,血が出る、歯ぐきが腫れている、歯がぐらついて食べ物がよく噛めない、などの症状がある場合は、早めの来院をお勧めいたします。
当院は歯周病治療に積極的に取り組んでいます。患者さんそれぞれの状態をしっかり把握した上で、それぞれに合った治療方法を提案致します。
比較的軽い歯周病であれば、歯や歯の周りを清潔に保つ治療を続けることで治すことが出来ます。しかし、炎症が歯肉の奥まで進行し、歯周組織の破壊がひどい場合には、歯周組織を回復させるための手術(歯周外科手術)が必要となります。この手術の際に、歯周組織再生用材料という手術治療を補助するための、歯科用の材料が使われることがあります。
当院での歯周病治療の流れ
問診
現在のお口の状態、ご家庭でのブラッシング方法等、今後治療をしていく上で参考になるお話を伺います。
歯周病の検査、口腔内写真撮影
レントゲンを撮って骨の状態を見たり、歯周ポケットの深さを測ったりして歯周病の状態を検査します。また、現在のお口の状態、治療方法の説明を分かり易く説明させて頂くために、お口の写真を撮ります。
プラークコントロール指導
歯周病の最大の原因はプラーク(歯垢)なので、正しいプラークコントロールの方法を指導します。
スケーリング(歯石取り)
最初の治療では、歯ぐきの上から見える歯石を、超音波スケーラー(超音波の振動を用いた装置)で除去します。基本的には、無麻酔の処置です。
ルートプレーニング
スケーリングでは取ることのできない歯の根の部分の歯石や、細菌に感染した部分をしっかりと除去します。スケーリングと違って、歯ぐきの深い所を触るため、基本的には、麻酔下での処置になります。
歯周外科治療、歯周組織再生療法
歯石を取り除いた後でも、深い歯周ポケットや歯を支えている骨にでこぼこがあると、すぐに歯石がたまりやすく、歯周病が進行していきます。このような状態を改善するために外科処置が必要な場合があります。深いポケットを浅くし、歯ぐきや骨のでこぼこを改善する処置です。患者 さんが、ブラッシングしやすいお口の環境を整えることが歯周治療の最終の目標です。また、当院では歯周病で減ってしまった歯の周りの骨を人工的に再生する歯周組織再生療法もしています。
歯周病治療後のメンテナンス
治療が終了したら、歯周病の再発を防ぐために定期的なメンテナンスが重要になります。約3~6カ月毎にご来院頂きます。
歯周組織再生する為に用いるエムドゲインゲルとは?
エムドゲインゲルは、赤ちゃんの時の発育過程の研究から生まれた歯周病患者さんのための新しいブタ歯胚組織使用歯周組織再生用材料です。子供の頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするたん白質の一種で、現在の科学水準に基づく高い安全性確保の下、幼若ブタ歯胚から抽出精製したもので、2009年3月現在、世界44カ国で使用されています。
歯周組織再生治療の流れ
手術前に・・・
歯周組織の状態を調べるために、歯周ポケットの深さを計ったり、レントゲンを撮ったり、その他治療に必要な検査を行います。エムドゲインゲルを使った治療が行えるかどうかは、歯周病の程度や患者さんの健康状態によっても異なりますので、入念にチェックし可否を判断いたします。
歯周外科手術可能であれば・・・
手術は麻酔をかけて行います。
まず最初に治療する部分の歯肉を切開し(図2)、剥離します(図3)。
次に歯根表面の清掃を行い(図4)エムドゲインゲルを塗布します(図5)。
最後に切開した歯肉部分を縫合し(図6)、手術は終了です。
手術にかかる時間は約1時間前後で、手術後、しばらく休んでいただいた後は帰宅できます。
抜糸は手術日から2~6週間後に行います。
手術後の注意点・・・
手術創は速やかに治癒しますが、手術部分の歯みがき等は指示に従って下さい。また、指や舌で手術部分を触らないで下さい。
手術後の感染を防ぐために、術後3~6週間は、消毒薬で口の中をよく洗浄するようにします。抗生物質が処方された場合は、指示に従って服用して下さい。
定期的な受診について
機能的な歯周組織を取り戻すまでには、数ヵ月から1年程度かかります。歯周組織が再生する期間、および程度は個人差があり、歯周病の進行具合によっても異なります。術後のスケジュールの詳細も患者さんによって異なります。
歯周病を再発させないためには定期的な検査を受け、口の中の衛生状態をいつも清潔に保つことが大切です。